北野・山本地区をまもり、そだてる会

まちなみ活動と市民活動

目次 1 2 3 4 5 6 前へ 次へ

阪神・淡路大震災による被害

周辺に比べ、比較的軽かった住環境への影響

平成7年1月17日、早朝に突如襲った阪神・淡路大震災は、この地区にも様々な被害をもたらせた。ただ、比較的安定した地盤の山麓部に位置することから、建物被害については、全壊が全棟数の4%程度の約50棟、半壊は100棟(8%)程度で、神戸市既成市街地6区における住宅全半壊の平均率が3割強であったことからすると、他の被災地に比べていくぶん軽微であったといえる。 そして震災直後のライフラインが途絶えた状況の中、避難所に逃れた人はこの地区でも多かったが、これら避難所も他地区に比べると早い時期に解消されている。

北野・山本地区周辺の避難所とピーク時期
避難所 ピーク時人数 ピーク時期
神戸外国クラブ
光の丘幼稚園
電子専門学校
新神戸オリエンタルホテル
神港学園高校
北野小学校
行吉学園
北野地域福祉センター
200 人
100
160
250
800
1,000
260
190
1/18、20
1/18〜20
1/27
1/18、19
1/19〜22
1/19〜22
1/20〜2/7
2/3〜28
神戸市総数 236,899 1/24

(神戸市中央市役所による)

震災前(平成2年国勢調査)の当地区には5,498人、2,506世帯が居住していたが、震災後(平成7年同調査)には 4,433人(△19.4%)、2,049世帯(△18.2%)に減少し、その後もこの傾向を続けている。そして、いずれも中央区平均よりも大きい減少率ではあるが、これは必ずしも震災の影響ではなく、震災前からの急激な世帯分離・高齢化傾向の延長線上にあり、むしろ震災後は住宅地としてのステータスの高さを背景に、昭和40年代に次ぐ第2次ブームといえるほどにマンション建設が盛んであり、人口・世帯数の減少率を軽減させている。

人口・世帯数の震災前後比較
  人口 世帯数
指数 世帯 指数
北野・山本地区 S.50年 7,231 1131.5 2,610 104.2
S.55年 6,739 122.6 2,660 106.1
S.60年 6,446 117.2 2,769 110.5
H.02年 5,498 100.0 2,506 100.0
H.07年 4,433 80.06 2,049 81.8
H.12年 4,099 74.6 1,994 79.6
中央区 S.50年 130,465 112.2 46,894 89.9
S.55年 115,330 99.2 46,477 89.1
S.60年 119.162 102.5 49,352 94.6
H.02年 116,279 100.0 52,179 100.0
H.07年 103,711 89.2 48,247 92.5
H.12年 108,033 92.9 55,602 106.6

(国勢調査)

このページのトップへ

今も強く引きずる産業面への影響

一方、産業面については震災を変換点とした低迷がうかがえる。震災前(平成3年事業所統計調査)には659事業所、4,747人が就業していたが、震災後の平成8年同調査では 562事業所(△14.7%)、3,998従業者(△15.8%)に減少し、震災から5年程度で底をうつものの、現在でも震災前の8割程度に留まっている。近年の沈滞化した経済情勢が大きな要因ではあるが、いずれにしろ事業所数や従業者数は震災前には中央区では稀有の増加傾向にあったにもかかわらず、震災を機に大きく減少に転じたのである。

事業所・従業者数の震災前後比較
  人口 世帯数
事業所 指数 従業者 指数
北野・山本地区 S.50年 278 42...2 3,004 63.3
S.56年 447 67.8 3,610 76.0
S.61年 532 80.7 3,801 80.1
H.03年 659 100.0 4,747 100.0
H.08年 562 85.3 3,998 84.2
H.11年 512 85.3 3,998 84.2
H.13年 530 80.4 3,555 74.9
H.16年 545 82.7 3.411 71.8
中央区 S.50年 19,549 76.7 239,336 93.4
S.55年 23,000 90.2 231,198 90.2
S60年 23,521 92.3 232,870 90.9
H.02年 25,492 100.0 256,212 100.0
H.07年 22,643 88.8 258,886 101.0
H.12年 22,673 88.9 229,131 89.4
H.13年 23.178 89.9 231,779 90.5
H16年 22.164 86.9 214,246 83.6

(事業所・企業統計調査)

*北野・山本地区とは、北野町1〜4丁目および山本通1〜3丁目
*指数は、震災直前の調査年値を100とする指数

北野・山本地区の主要な産業は、古くからの地場産業といえる「真珠の加工・卸業」、昭和50年代から増えはじめたブティック・レストランをはじめとする「小売店舗や飲食店」、そして「観光産業」で、近年の落ち込んだ経済情勢のなか、いずれも低迷しているといわざるを得ない。

このページのトップへ

震災前の水準に戻らない観光客数

観光産業を代表する公開異人館等の施設は、神戸市が管理するものを含め震災前には26館が設けられていた。いずれの館も震災によって大なり小なり被害を受けたが、平成7年のゴールデンウィークまでに12館、平成8年中に23館、そして平成9年3月に大規模な耐震補強工事の施された旧トーマス住宅(風見鶏の館/国指定重要文化財)の修復が完了し、運営主体や展示テーマの変わったものも何館かあるものの都合24館が再開を果たした。震災後約2年で9割以上の復旧はなされたのである。しかし、それに比して観光客の戻りは遅く、震災前の平成6年が166万人であったのに対し、震災の翌々年である平成9年においても70%の116万人に留まっていた。そして平成10年以降には95%以上に戻っているが、これは平成10年7月にオープンした「北野工房のまち」への来訪者の影響が大きく、既存の公開施設への来訪者数は、後述するインフィオラータ等のイベント時を除けば、現在に至るまで平成9年当時と大きな変化はないというのが実感である。いずれにしろ、神戸市全体や市街地観光では平成10年に震災前の入込客数を取り戻した中で、北野・山本地区の来訪者は再び震災前の9割に落ちている。  この要因として考えられるのは、体験型・参加型観光が好まれる一般的な風潮の中、施設型観光への不満・倦怠感である。神戸市生活文化観光局による観光資源調査(平成14年)でみても、これら公開施設の利用経験者の再来訪意向は、2〜3割と非常に低い。しかし半面、毎年秋に地元組織で実施しているまちなかを散策中の観光客を対象にしたアンケート調査では、例年8割以上の人が再来訪意向を示している。つまり、テーマパーク的な施設は飽きられ、もしくはその見世物としての本質が見抜かれる一方で、伝統的なまちなみや生活文化を味わうという本来の観光が求められている結果といえる。事実、最近では公開異人館が飲食店等に転用される例が複数みられる。そしてこのような視点からすると、住宅地としての地位が再び見直されつつある現状も考えあわせ、震災前に比べて来訪者が減少しているという現実は、落ち着いた住宅地というこのまちがもつ魅力と観光地としてのポテンシャルを持続させる上で、むしろ歓迎すべきことではないだろうか。

●北野・山本地区における公開施設(平成18年8月現在)
×:閉鎖・撤去(平成15年3月現在) △:後に用途変更 ○:震災後に新規公開
  公開施設 再開年月






プラトン装飾美術館(旧イタリア館)
 仏蘭西館(洋館長屋)
×キャセリン・アンダーセン邸〈平成12年1月再び再閉館〉
 香りの家オランダ館
 ラインの館
 英国館
 ベンの家
 萌黄の館(重文)
△旧サッスーン邸(H14.9よりブライダル施設)
 旧パナマ領事館
 神戸北野美術館(旧ホワイトハウス)
 シュウエケ邸
 風見鶏の館(重文)
×ペルシャ美術館(旧バジャージ邸)(平成15年3月 認定解除)
H7.3
H7.5
H7.5
H7.5
H7.7
H7.11
H7.12
H8.4
H8.4
H8.6
H8.11
H8.11
H9.3
未再開







本家オランダ館(旧エリオン邸)
 うろこの家・うろこ美術館(登録文化財)
 アメリカンハウス(現テディベア・ミュージアム)
 旧中国領事館(旧OCTOBER-14)
 ザ・テディベア・ミュージアム(現アメリカンハウス)
 北野外国人倶楽部(旧明治館)
 山手八番館
○△北野物語館《移築再建》(H15・国登録文化財)(H14.11より喫茶)
×展望塔の家
H7.3
H7.4
H7.4
H7.5
H7.5
H7.7
H7.7
H13.7
未再開


×ジュノーの館〈平成11年閉館〉
 ウィーン・オーストリア館
 デンマーク館
 桂由美ブライダルミュージアム
H7.4
H7.5
H7.5
H8.4

※地区内には上記の他に、パラスティン邸(伝建認定、H10.7より喫茶店)、グラシアニ邸(伝建認定、レストラン H18.6閉店)、東天閣(中華料理店)の異人館活用施設がある。

●北野・山本地区の観光客数の推移
  観光客数 平成6年比 「北野公房のまち」
来訪者数
(平成10年7月11日オープン)
平成6年 166万人 100%  
平成7年 41万人 25%  
平成8年 112万人 67%  
平成9年 116万人 70%  
平成10年 157万人 95% 42万人
平成11年 161万人 97% 78万人
平成12年 160万人 96% 81万人
平成13年 153万人 92% 79万人
平成14年 151万人 91% 79万人
平成15年 145万人 87% 75万人
平成16年 161万人 97% 96万人
平成17年 138万人 83% 87万人

(神戸市観光交流課による)

目次 1 2 3 4 5 6 前へ 次へ

このページのトップへ